映:スワロウテイル
監督・脚本:岩井俊二
制作国:日本
あらすじはWikipediaから引用した。
以下の通りである。
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"円"が世界で一番強かった時代。一攫千金を求めて日本にやってきた外国人達は、街を"円都(イェン・タウン)"と呼び、日本人達は住み着いた違法労働者達を"円盗(イェン・タウン)"と呼んで卑しんだ。そんな円都に住む、円盗たちの物語である。
少女・アゲハ(伊藤歩)は、円都の娼婦であり唯一の肉親である母が死んでしまい、行き場がなくなってしまう。母の同僚の無責任な大人達にたらい回しにされる中、娼婦グリコ(CHARA)の元に引き取られる。胸に蝶のタトゥーをつけ美しい歌を歌うグリコは、それまで名前がなかった彼女に"アゲハ"の名前を与える。グリコもまた、"円"を夢見て上海から日本にやってきた円盗だった。彼女の周りにいるのも、彼女と同じように円を求めて日本にやってきた円盗達だ。アゲハが彼らと共に過ごして数日経ったある日、アゲハを強姦しようとしたヤクザを誤って死なせてしまう。彼の体内には一万円札の磁気データが記録されたカセットテープが入っていた。
ひょんなことから一攫千金のチャンスを得た彼ら。データを元に作った偽札で儲け、グリコは歌手としての道を歩むが……。
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あらすじを読んでも映画の魅力は涙が出るほど伝わらない。
かと言って自分なら伝えられるかと聞かれると……難しい。
物語はそんなに単純じゃない。
英語、中国語、日本語が入り混じったカオスな世界で、何一つ交わるものを持たない他人が共に生きる。
時に離れ、時に近づく。
その時間の意味は分からない。
彼らを繋ぐものは何なのか。
キレイゴトなんて必要ない。
ただ彼らの間には、何にも保証されない脆くて不安定な何かがある。
醜いところが美しい数少ない映画だ。
映像は執拗に揺れ動き、平和に生きていれば見ないようなものが映される。
吐き気がする者もいるだろうし、何が言いたいの?と嘲笑する者もいるだろう。
でも恐ろしいことにこの映画はなかなか頭から離れない。
CHARAの稀有な歌声と共に想起する。
胸に刻まれたアゲハ蝶のタトゥーを楽しそうに羽ばたかせるグリコの姿も、一緒になって笑うフェイホンも、集めたお金を燃やすアゲハの姿も。まるで頭にスワロウテイルを飼っているように、時々私を困らせる。
非現実的な世界を描くこの映画で、生きることのリアルを見つけた。
それは僅かな幸せな瞬間が、苦しい今を生かすこと。
簡単に涙は出ないこと。
分かりやすく泣けたなら、こんなに尾を引くことは無かっただろう。
スワロウテイル・バタフライはアゲハ蝶の英語名。
私は今もまだ、あの世界に自分を置いてきたままだ。
予告動画↓
https://m.youtube.com/watch?v=a6bm39p4IK4