映:ダンサー・イン・ザ・ダーク
監督:ラース・フォン・トリアー
制作国:デンマーク
第53回 カンヌ国際映画祭にてパルム・ドール受賞 他4タイトル受賞作品。
以下のあらすじはDVDパッケージの裏面に書かれているものだ。
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チェコからアメリカにやってきたセルマは女手ひとつで息子を育てながら工場で働いている。セルマを母のように見守る年上の親友キャシー、何かにつけ息子の面倒を観てくれる隣人ビル夫妻、セルマに静かに思いを寄せるジェフ。様々な愛に支えられながらもセルマには誰にも言えない悲しい秘密があった。病のため視力を失いつつあり、手術を受けない限り息子も同じ運命を辿るのだ。愛する息子に手術を受けさせたいと懸命に働くセルマ。しかしある日、大事な手術代が盗まれ、運命は思いもかけないフィナーレへ彼女を導いていく…。
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様々なレビューや批評で『救いのない物語』と評されるこの作品。
衝撃的なシーンで幕を閉じ、いい意味でも悪い意味でも観客にとっては忘れられない映画となるだろう。
苦しいバッドエンドだ。
でも私は後味が悪いとは思わなかった。
あまりにも理不尽なストーリーに、人間を、この世界を嫌ってしまいそうになる。
それがこの映画が賛否両論となる所以だろう。
多くの人は主人公のセルマに同情し、賞賛する者は「この救いのなさがいいんだ」と主張し、批判する者は「胸糞悪い映画だ」と一蹴する。
本当にこの映画はそれだけだろうか。
私には「優しくて切ない愛」の物語に見えた。
嘘をついてでも守りたいもの、自分の命より大切な人、嫌われる覚悟で救いたい命。
それぞれの願いは叶おうが叶うまいが、決して無駄にはならない。
それがいくら独善的でもその想いが有るのと無いのとでは、最後の景色はきっと雪と墨。
私はこの映画で心を失ってしまいたくなった。
でも人間のことを好きにもなれた。
形だけ見て謳われるバッドエンドも、叶わなかった想いも、哀しいだけのエッセンスではないのだ。
セルマは誰も傷つけないように静かに愛した。
息子や親友や支えてくれた人たちを。
美しさを求めないで生まれた美しい感情がとても眩しくて、私は彼女が暗闇にいることを忘れてしまいそうだった。
セルマ役のビョークの歌声はまだ鳴り止まない。
予告動画↓
https://m.youtube.com/watch?v=NQ6HozU5TGo