映:ファンタスティック・プラネット
監督・脚本:ルネ・ラルー
制作国:フランス/チェコ
カンヌ国際映画祭でアニメーションとしては世界初の審査員特別賞を受賞した。
あらすじは例の如くBlu-rayパッケージの裏から引用。
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赤い眼を持つ巨人ドラーグに虐げられる人間(オム族)。主人公テールは仲間たちと共にドラーグ族への反逆を企てる。だが、情け容赦なく発動するドラーグ族の〈人間絶滅作戦〉は人間を虫けらのように蹴散らしていく……!
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映画自体は風刺的な意味合いが強いのではないだろうか。
弱肉強食、人間と他の動物たちとの関係性。
一見至極真っ当なことでも、反対の立場になると途端に違和感に気付く。
ドラーグ族は人間をペット・おもちゃ・虫のように扱う。
私はペットとして可愛がられる小さな人間の姿に鳥肌がたった。ドラーグ族が怖い。飼い主が怖い。どうしたって敵わない相手に支配される恐怖だ。ペットという名のおもちゃだ。そして彼らの手を離れた途端、虫けらのように虐げられる。
この映画を見た人は間接的に、弱き立場の気持ちを味わうことになるだろう。
この作品は、紙に直接描いたものを切って背景の上で動かす「切り絵アニメーション」の手法を用いている。
そのため動きは滑らかでなく、どこかぎこちない。
今日のようにCG技術を駆使すればもっと自然な動きになったかもしれない。
しかしこの不自然さこそが作品の魅力である。
そして私は映し出された映像に何となく既視感を覚えた。
もしかしたら子どもの頃に見る怖い夢に似ているのかもしれない。
明らかに非現実だというのに完全にその世界に取り込まれて現実だと錯覚してしまう。
思い通りに身体が動かせないあの感じに。
ローラン・トポールの絵を見て戦慄が走ったのは言うまでもない。唯一無二で、エッジが効いてて、怖くて、よく分かんなくて、そして面白い。世界を席巻して清冽な幻想で満たす。彼の絵が無ければこの映画は完成しない。
監督のルネ・ラルーは長編作品3本のみという寡作。彼の経歴に精神科病院で患者と共に芸術活動をした記録があるのも興味深い。心が華奢な人々は彼に少なからず影響を与えたように思う。
そんな2人が魂を込めて作った映画。
私は字幕有りで見たが、字幕が無くても楽しめそうだ。
有っても全ては分からないから。
でも、それが人を惹きつける。
いつか彼らの頭の中を覗いてみたい。
そんな衝動に駆られた。
予告動画↓
https://m.youtube.com/watch?v=eqasOFRurH4