Purple Fabric’s Diary

映画や本、その他諸々について自分の意見を書くブログ。日本人になりたい日本人。Filmarks ID:pierrotshio

映:イン・ハー・シューズ

監督:カーティス・ハンソン
制作国:アメリ

 

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あらすじ
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周りが羨むスタイルと美貌を持ちながら問題ばかり起こす妹マギー。姉ローズは弁護士として成功しているものの、自分の容姿に自信が持てず、高価な靴を買いながらも履くことはない。定職にも就かずローズの家に居候していたマギーはある時、ローズの留守中に訪ねてきた彼女のボーイフレンドと寝てしまい、家を追い出される。行く当てのないマギーは祖母エラがフロリダにいることを知り、訪ねる。

家族と絶縁していたことに罪悪感を抱くエラは埋め合わせができると思い、マギーを歓迎するが、マギーはエラのお金を盗もうとする。
エラはマギーに施設内の介護の仕事をするように言う。そこでマギーは盲目の元大学教授と出会い、詩の素晴らしさを教わる。コンプレックスであった難読症を克服しようと努力するうちにマギーは大きく変わっていく。

一方、ローズも自分を見つめ直し、弁護士の仕事を辞めてドッグシッターを始める。ローズは仕事を辞めてからも気にかけてくれた元同僚のサイモンと親しくなり婚約する。
やがてフロリダでローズとマギーは再会して和解。ローズはエラの靴を履いてサイモンと結婚式を挙げ、マギーは結婚式で詩を読んでローズに贈る。
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"In Her Shoes"とは、「彼女の立場になって」という慣用句である。
真面目で堅い姉のローズと無鉄砲で自由な妹マギーが喧嘩して仲直りして以前より仲良くなるという在り来たりなストーリーではあるが、作品の中で素敵なシーンがあったので紹介したい。
それはマギーがエリザベス・ビショップの『One Art』という詩を読むシーンである。


難読症のマギーは施設で元大学教授のおじいさんにお願いされてこれを読み上げる。
文字を読むといつも言葉に詰まり、その度に周り人の目を気にしていたマギー。

おじいさんはゆっくり、一文字ずつ読めばいいと優しく励ます。
そしてマギーは躓きながらも読み切る。
おじいさんはマギーに問う。
「これは何の詩?」
マギーは迷い、答える。
「…愛」
「何の愛?」
「友情」
「Aプラスだ」
マギーは嬉しそうに微笑む。
自信を取り戻したような表情であった。
喜んだマギーはその後、おじいさんに色んな本を読み聞かせた。
登場シーン自体は少なく、作品の終盤に亡くなるおじいさんだが、彼が物語そしてマギーに与えた影響は計り知れない。

彼は、上手じゃなくても自分の力で読んで、そこから何かを感じることに意味があると教えてくれたように思う。


効率重視で、つい過程を省きたくなる。
企業が即戦力を求めるように、私たちが学歴や肩書きを欲しがるように。
そこから得られるものもあるが、別の世界に行けばそこにもたくさん得られるものがある。
何かを味わう過程を大事にしたいと思った。


そして詩も素敵な内容なので、和訳とともに紹介する。

(映画では中間が省略されていたが、ここでは全文載せることにする。和訳はネットのものを参考に自分で付けた)


マギーがなぜ「愛」「友情」と表現したのか。彼女の言う「友情」はきっと姉との「友情」。
自分は何の詩に聞こえるのか、考えながらだと面白い。


***


One Art      By Elizabeth Bishop


The art of losing isn't hard to master;


so many things seem filled with the intent


to be lost that their loss is no disaster.


失う術を習得するのは難しくない
とても多くのものが忘れられるために存在するようで
だから たとえそれらがなくなっても大惨事にはならない


Lose something every day. Accept the fluster


of lost door keys, the hour badly spent.


The art of losing isn't hard to master.


毎日何かを失くしている
ドアの鍵をなくした動揺も 無駄にした時間も
失う術を習得するのは難しくない


Then practice losing farther, losing faster:


places, and names, and where it was you meant


to travel. None of these will bring disaster.


次はもっと大掛かりに 速く 失う練習をしよう
場所 名前 旅するはずだった行き先
どれも大惨事には至らない


I lost my mother's watch. And look! my last, or


next-to-last, of three loved houses went.


The art of losing isn't hard to master.


母の時計を失くした そしてほら!好きだった三軒の家の 最後の それか最後から二番目の家 なくなってしまった
失う術を習得するのは難しくない


I lost two cities, lovely ones. And, vaster,


some realms I owned, two rivers, a continent.


I miss them, but it wasn't a disaster.


二つの素晴らしい街を失った
そして広大な領土も 二つの河も 大陸も
恋しいけれど 大惨事には至らなかった


-Even losing you (the joking voice, a gesture


I love) I shan't have lied. It's evident


the art of losing's not too hard to master


though it may look like (Write it!) like disaster.


あなたを失うことでさえも
(その冗談めかした声 大好きな仕草を)
私は嘘はつかない
失う術を習得するのは難しくないから
たとえそれがとても(書いてしまえ!)大惨事に思えても


***


最初に訳なしでこれを読んだとき、私も「愛の詩」だと思った。

でも私には、「友情」ではなく「親への愛」に思えた。


ローズの結婚式では別の詩を読んでいたのでそれもいつか紹介するかもしれない。


予告動画↓

https://m.youtube.com/watch?v=hkKhHSQE0ig