映:海街diary
監督:是枝裕和
制作国:日本
あらすじ(ネタバレ注意‼️‼️)
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十五年前に家を出た実父が闘病の末に亡くなった。その父が再々婚しており、遠く山形に暮らしていたことを香田家の三姉妹は知る。自分たちを捨てた父親との確執から長女の幸は仕事を理由に次女の佳乃と三女の千佳を告別式に送り出す。二人を駅で出迎えたのは中学生になる腹違いの妹すずだった。翌日の葬儀に来ない予定だった幸がなぜか現れる。看護師である幸はすずの置かれた肩身の狭い境遇とすずが父を看取った事を感じ取る。幸はすずに父との思い出の場所に案内して欲しいと頼む。するとすずは小高い山の上に姉妹たちを案内した。佳乃たちはそこが鎌倉の風景によく似ていると話す。すずとの別れに際し、幸は鎌倉で一緒に暮らさないかと持ちかける。すずは「行きます」と即答する。
こうしてすずを迎えた香田家は四姉妹となった。サッカー好きで明るい性格のすずは鎌倉の生活にもすぐに溶け込み、チームでコンビを組む風太と親しくなった。
頑なだった幸を父の葬儀に送ったのは交際中の小児科医、椎名だった。椎名は心の病を抱える妻との離婚に踏み切れずに幸との関係を続けていた。市民病院で働く幸には新設される終末期病棟への転属の話が持ち上がっていた。「看取る」ことの難しさは椎名に言われるまでもなく幸も感じていた。
酒と男が生き甲斐という佳乃は貢いでいた若い恋人に捨てられる。それを契機に信用金庫の窓口嬢だった佳乃は融資担当で外回りの仕事への配属変えを受け入れる。佳乃はさち子が弟から遺産相続分を請求され、海猫食堂が存続の危機に陥っていることを知ってしまう。佳乃は上司の坂下と共に店の存続のために奔走する。
千佳は勤め先の店長と交際していた。彼の趣味に合わせ、すずたちの居るサッカーチームのサポーターとなり、渓流釣りにも興味を示す。だが、元は山男だった店長はエベレストで遭難し、凍傷で足の指を6本失いながらも山への未練を捨てきれずにいた。
サッカーチームの勝利を祝すため千佳はすずに梅酒を飲ませるが運悪くそれは佳乃が自分用に作ったものだった。酔っぱらったすずは義母や父に溜まっていた鬱憤をぶちまける。姉妹たちは非の打ち所のないすずに深い悩みがあることを知る反面、酒乱の癖が佳乃に似ていることに苦笑する。
新学期になりすずはクラス替えで風太と同じクラスになる。二人は付き合っていると噂を立てられていた。チームメイトたちと『山猫亭』を訪れたすずは、店主が父の古い馴染みであることを知る。亡父を思いだしセンチメンタルになるすずを風太は自転車に乗せ、満開の桜並木が作り出すアーチを疾走する。
そんなとき、北海道で暮らす幸たちの実母・都が法事にやってくる。身勝手で子供じみた母にかねてから反発していた幸。すずは都から何を言われるかと心中穏やかではない。都はすずと衝突することはなかったものの、突然家を処分しろと言いだす。都と幸は大喧嘩になり、史代から叱責される。だが、佳乃はいずれ皆この家から巣立つとクールに語る。明るいすずも、不倫の子であることで、姉たちに引け目を感じていた。幸と料理をしていたすずは「不倫は良くないね」と話し、そんな引け目を示唆する。幸が不倫の恋をしていることは知るはずもなく。
翌日、夜勤で日中家に居た幸を都が訪ねてくる。都は渡しそびれたと姉妹たちへのお土産を置いていく。すずの分も用意されていた。雨の中、都と祖母の墓参りに行った幸は、都が母親との根深い確執に悩み、家は彼女を縛り付ける窮屈なものだったが、幸たちにとっては大切な場所だと思い知らされたと謝罪する。幸は北海道に帰る都に、家族の思い出の品である梅酒を手渡すのだった。
季節は夏を迎え、花火大会が近付いていた。幸はすずのために自分の浴衣を仕立て直す。浴衣を着たすずはサッカーチームのメンバーと洋上で花火見物をする。その帰り、すずは風太に「ここに居ていいんだろうか」「自分の存在が人を常に不幸にしている」という、姉にも言えない悩みを打ち明ける。
千佳とすずは一緒に作ったカレーを食べる。香田家のカレーは都が幸に唯一伝えた「シーフードカレー」だったが、千佳は姉たちには不評な「ちくわカレー」が祖母との思い出の味だった。祖母を知らないすず、父をほとんど覚えていない千佳。千佳はお父さんのこと教えてねとすずに話す。
佳乃と坂下の奔走により、融資により店が続けられることをさち子に伝える。だが、さち子は余命が限られており、店を畳み、終末期病棟に入ることを決めていた。酷く落ち込む二人だったが、坂下はさち子のために遺言書を作成することは出来ると話す。
椎名は研究のため渡米する決意を固め、幸に一緒に来て欲しいと告げる。人生の岐路に立たされた幸は悩み抜く。大人の事情で子供時代を奪われたすずを思い、幸は姉妹たちとの生活を選んで椎名に別れを告げる。
幸とすずは二人で山に登る。そこはかつて父が幸を連れてきた場所で、父が家族を捨ててからは一人で来る場所だった。その風景はすずが姉妹たちを案内した山形の風景にそっくりだった。二人でひとしきり叫んだ後、幸はすずに「ここに居ていいんだよ」と告げる。
幸は看護師としてさち子の最期を看取った。葬儀で大泣きする佳乃。さち子との想い出をひとしきり語った仙一は帰り際の姉妹の中からすずを呼び止め、「お姉ちゃんたちには内緒でお父さんのこと聞きにおいで」と告げる。
浜辺を散策する四姉妹は人生の最後について語り合う。無邪気に波と戯れるすずを見ながら、幸は「お父さんはダメな人だったけれど、私たちにすずを遺してくれた」と妹たちに語った。
個人的に、この映画は絶対に観たい!と強く思っていた。
長澤まさみは初恋の人と言っても過言ではないくらいかつては好きだったし、何より自分が鎌倉市民であるからだ。
思っていたくせにテレビで放映されるまで観ていなかったのは、好きな食べ物は最後まで取っておきたいこの性格故だ。死ぬ直前にでも観る予定だったが、急遽変更して休日の朝から観てしまった。
ストーリーもキャストもロケーションも最高のものが集まっている。
まず台詞がとても良いのだ。
「もしあれだったら」とか「とりあえずあれして」とか、これで相手に伝わるということを我々は知っているけれど、それを台詞にする人はそうそういない。人間の会話を、話し言葉というものを、監督はよく聴いているのだなと思う。
そして、すずの口調が段々柔らかくなる。これは、彼女の緊張が解けて家族に馴染んでいく過程を滑らかに表現していると思う。
脚本を、敢えて彼女にだけは見せなかったらしい。監督が口で言った言葉をその場で覚えさせる。この思い切った手法が功を奏し、台詞が彼女自身の言葉として自然に出て来た。
素晴らしいキャスト陣。
噂には聞いていたが広瀬すずの透明感、いや、透明だと見えないので半透明感が凄い。
私は演技は声と目が重要かなと個人的に思うのだけど、彼女は瞳の奥の色を変えることができる人のような気がする。
少なくともこの作品においては。
蒼井優も評価していたが、桜のトンネルを自転車でくぐるシーンにて、彼女の髪についた花びらが最後に取れるのは当に神の御業。運まで味方に付けているらしい。
夏帆は安定感があって演技というものを感じさせない。
綾瀬はるかはお母さんにしか見えない程の長女っぷり。
長澤まさみは顔、声、スタイル、演技、全て好きなので困ったものだ。天真爛漫さと大人の落ち着きの同居した役柄がとても良い。
美しいストーリーだ。
それぞれに、悩みがある。それは寧日に刺さった棘。優しくとも触れれば痛みが走る。それは自分の力で乗り越えなければならない。
しかしそれはコーヒーに垂らしたミルクのように、エントロピーを増大させ静かに調和する。ここでいうコーヒーは家族の温かさ。ミルクはそれぞれが家に持ち帰る悩みや疲れ。
もう一度観たい。
大好きな鎌倉の風景と、風に揺れるカーテンのようなお話。
是枝監督の作品をもっと観たい。
予告動画↓
https://m.youtube.com/watch?v=klRrF-EMvk4