Purple Fabric’s Diary

映画や本、その他諸々について自分の意見を書くブログ。日本人になりたい日本人。Filmarks ID:pierrotshio

「ピアノソナタ『月光』殺人事件」感想

名探偵コナン 第11話「ピアノソナタ『月光』殺人事件」のリブート(リメイク)版が、TVで放送された。

大きな声では言えないけれど、やはり何も言わずにやり過ごすことはできそうもないから、ここでひとりで語ってみる。

未来を生きる為に、今日のオタクは今日吐き出すことにする。

日付変わったけど。

 

ストーリー自体が持つ面白さは健在だった。

ファンや青山先生自身の評価からも分かる通り、ミステリーとしての完成度の高さが本作の魅力の一つだから、リブート版も悪くはない。

しかし、冒頭の言い草からも伝わっているだろうが個人的にはリブートは不要だったと思っている。

なぜならオリジナルの作画や声、雰囲気が私の中では完全無欠、完璧なものであり、リブート版はそれを越えることはおろか、同じレベルにすら達していないと感じてしまったからだ。

もちろん主観なのだが。

 

かつての作画は表情が豊かだった。

登場人物のデフォルメされた感情がむき出しになっていて、いい意味でキャラ化されていた。

そこに私たちは愛着を覚え、クスッと笑ってしまうのだ。

そしてだからこそ、シリアスな場面や狂気を孕んだ表情にゾクゾクするのだ。

昨今の作画は非常に安定しており、作画崩壊等とは無縁の日々が続いている。

技術の進歩、業務の効率化、作画の安定化、どれも素晴らしいことである。

しかし、かつて毎週のように変わっていた作画のあの味わいを忘れることができない。

それは単なるノスタルジーの様な後天性のものではなく、もっと先天的・潜在的なものだったと思うのだ。

そこには、確かに何かが宿っていた。

コナンの好きな話を振り返って見ると、そう思わずにはいられないのだ。

 

今も変わらず高山みなみさんの声はちゃんとコナンで、安心して聞いて、見ていられる。

だけど、やっぱり昔と今とでは演技が異なる。

良し悪しは各々の感覚でしか図れないが、オリジナルの切羽詰まった必死な演技の迫力は、間違いなく宝物だった。

それから、オリジナルのなるみさんの少し鼻にかかっていてハスキーな声がとても良かった。

声優を務めた折笠愛さんからは少年をベースにした女性の声という構造が感じられて、役にピッタリであった。

今回声優を務めたのは、沢城みゆきさん。

有名で人気な声優さんというだけあって、器用に声色を変化させていた。

スッキリしていて綺麗な声質と技術面での器用さは魅力的だが、お姉さんベースの声は役との間にギャップがあった気がする。

声に関しては本当に完全に個人的な感想だが。


閉鎖的で特殊な環境で起きる事件は、どちらかというと「金田一少年の事件簿」っぽい気がする。

日常生活において事件が起きるコナンの中では少し異質で、思いつく限りだと他には「青の古城探索事件」や「そして人魚はいなくなった」等がある。

これらも本作と同様に好きな話だ。

異質な存在の本作。

ベートーヴェンピアノソナタ第14番が効果的に使用されていて、始終不気味な雰囲気が漂っている。

ホラーでもサスペンスでもない。

これがミステリーなんだと思わされた、謎解きの場面。

声優さんの演技に脱帽するクライマックスと、その後に残る切ない余韻。

1996年には完成されていたと考えると尚更凄い。

 

オリジナルの方はYouTubeで公開されているので、見たことない人はぜひ見てほしい。

個人的には、さらっとピアノ弾いちゃう蘭ちゃんがとても好き。

それから、トボけて見える警官が、年の功か意外と鋭いところも昔のコナンっぽく感じられて好き。

そして最後の暗号からピアノの音楽への滑らかな流れが、失ってしまったもの、もう取り戻せないものの大きさを物語っているようで好き。

 

 

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以上、ひとりごとでした。