Purple Fabric’s Diary

映画や本、その他諸々について自分の意見を書くブログ。日本人になりたい日本人。Filmarks ID:pierrotshio

詩:けがした指

タイトル:けがした指

作者:金子みすゞ

 

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白い繃帶(はうたい) してゐたら、
見てもいたうて、

泣きました。

 

あねさまの帶(おび)借りて、

紅い鹿の子でむすんだら

指はかはいいお人形。

 

爪にお顔を描いてたら、

いつか、痛いのわすれてた。

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引用(http://www.geocities.co.jp/Bookend-Hemingway/5778/poem3-2.htm

 

 

【感想】

授業で金子みすゞの詩をいくつか読んだあと、最も心に残ったのがこの作品だ。

小さな女の子が白い包帯の付いた指を見つめて、そのうちに雑巾を絞るように顔を歪め泣き出してしまう、そんな姿が鮮明に浮かぶのは幼い頃の自分に少なからず似ているからだろう。

私には姉がいて、その姉もまた、「あねさま」と重なってしまう。

ついさっきまで泣いていた。確かに泣いていたのに、今は目の前にいる姉と笑っている。そしてその笑いが治まった頃、涙の跡に風があたりヒヤリとした感覚と共に思い出す。「ああ、そういえば泣いてたんだっけ。」この魔法をかけられたような経験を、心地よいリズムで鋭く言い当てられたのがとても嬉しかった。

この歳になると、幼い頃の思い出は切なさが勝り、純粋に楽しい気分にはなれないのだが、不思議なことにこの詩は、私のそんな錯綜した感情さえも受け入れてくれるのだ。

自分の人生の一ページを、映画のワンシーンのように優しく描写してくれた作者に感謝したい。