映:チャンブラにて
監督:ジョナス・カルピニャーノ
制作国:アメリカ/イタリア/スウェーデン/ドイツ/フランス/ブラジル
2019年1月26日(土)より公開。
試写会にて、先に拝見しました。
非常に重たいテーマと現実があった。
イタリアのラブリア州レッジョ・カラブリア県に位置するジョイア・タウロと呼ばれる共同体。そこにあるスラムと化した一つの通り、チャンブラには大昔から差別を受け続けているロマという民族の一部の人たちが住んでいる。
彼らは元々、旅をして暮らす流浪の民だったが、異教徒と揶揄されるようになり、様々な迫害を受けチャンブラから離れることができない。まともな職に就くことのできないロマたちは他人のものを盗み、売ることで生活している。
監督が主人公ピオとその家族と出会ったのも、撮影機材が積まれた車をロマに盗まれたことがきっかけだったという。
映画は14歳の少年ピオを中心としたロマの生活がドキュメンタリーチックに描かれている。
幼い子どもたちが煙草を吸い、お酒を飲み、クラブで踊る。
兄弟や親戚が入り混じるひとつの家で暮らすピオは、丁度大人と子どもの間にいた。
家族の役に立ちたい。
常に豊かでない家にお金を入れるため、ピオは盗みを働く。
家族はそれを知ると彼を叱るが、兄や父は当たり前にそれをやってきた。大人の世界での暗黙の了解であった。
盗みを働くことがイニシエーション的な意味を持つのだ。
正しいかどうかなんて考えてはいけないのだ。
ピオの年上の親友で、アフリカからの移民であるアイヴァもまた重要な人物である。
優しく見守りながらも叱ってくれる親友の存在は、ピオにとって何も考えずにいられる大切な居場所であった。
善悪、生死、家族、親友、イニシエーション。
大切もの、優先すべきものは国や人によって異なる。
ラストシーンのピオはまさに狭間にいた。
今までいた子どもの世界と、家族の為に"働く"ことができる大人の世界の間である。
そしてピオは選択する。
これから自分が生きる世界を。
出演者のほとんどが演技経験のない現地の人である。
映像の揺れと爆音のEDMに酔いそうになったが、一度見てみる価値はあると思う。
予告動画↓
https://m.youtube.com/watch?v=h8MD7hBrDko