映:大人は判ってくれない
監督:フランソワ・トリュフォー
制作国:フランス
あらすじ
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両親の愛を知らずに育った12歳のアントワーヌ・ドワネル。家庭でも学校でも自分の居場所を見つけることのできない彼の行動は常に周囲と行き違う。遂には少年鑑別所に送られてしまった彼は逃亡し、一人海に向かうのであった…。
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長編デビュー作にして監督自身の自伝的要素も含むこの作品。
大人にとっては些細なことが、子どもを傷つけることもある。
ちょっとした悪戯で人間性を否定されたり、何かあれば疑われたり。
タイトルである『大人は判ってくれない』が散りばめられた映画だ。
私はこの映画の内容を人に話したとき、「暗い気持ちになりそうだね」と言われた。
確かに、寂しい。
誰も膝を折って彼の顔を覗き込まない。
どんな顔で話しているか、どんな顔で話を聞いているか、知ることはない。
学校をサボってしまう。
怖くて徒らに嘘をついてしまう。
「実は、母が死にました」
盗みを働いてしまう。
叱られるのは当たり前だ。
愛を感じられるのなら。
彼には親友がいたが、孤独も同然だった。
しかし全く幸せじゃないなんてことはない。
家出したアントワーヌが家に帰ってきたとき、母はとても優しかった。
いつもは寝袋で寝ていたが、その日は母のベッドで寝かせてくれた。
父と母と3人で映画を観に行ったときの楽しそうな談笑シーンは皮肉にも見えるが、アントワーヌは心底幸せだっただろう。
少年鑑別所を抜け出したアントワーヌは海辺に走る。
海を背に、カメラをじっと見つめる姿でエンディングを迎える。
無限に広がる海は、自分を理解してもらえず窮屈な思いをしていたアントワーヌとは対極の存在に見えた。
この映画を観た大人は、ほとんど初めてそこで子どもの表情に気付く。
こうして画面いっぱいに描かないと分からない訳だ。
大人と子どもの間にこんなにも大きな壁があるのか、と悲しくなる。
自分は今、どちら側の人間なのだろう。
子どもには、どう見えているのだろう。
本作を皮切りに「アントワーヌ・ドワネルの冒険」シリーズが作られた。監督トリュフォーにとって重要な作品となっただろう。
そしてアントワーヌ役のジャン=ピエール・レオもまたこの作品で高い評価を得て、ヌーヴェルヴァーグの様々な作品に出演するようになった。
ヌーヴェルヴァーグ作品の導入として観るのもいいのではないか。
予告動画↓